by Craig Allan
OpenStreetMapは、国連が推薦するマルチステークホルダー・イニシアチブであるDigital Public Goods Alliance (DPGA)に申請し、このたび”Digital Public Good”として登録されました。 この登録は、OpenStreetMapがグローバルな経済発展において積極的な役割を果たしていることを認識してもらうための重要なステップです。
Public Goodとは?
“public good”という言葉は、無料で、無尽蔵にあり、競争のないものを表すために経済学者によって考案されました。太陽の光はその良い例で、コストがかからず、枯渇することがなく、隣人がたくさん使っても自分の供給が減ることはありません。
太陽の光と同じように、OSMデータもまた、無料で、好きなだけ使うことができ、隣人がたくさん使ったとしても、自分の供給がなくなることはありません。注意するべきは、Public Goodであるのはデータであって、サーバーではないことです。私たちのサーバー・コンピューターは無料ではなく、限られた資源なのです。
世界をより良い場所に
2019年、グローバルな開発を支援するデジタル協力について検討するため、国連において専門家パネルが招集されました。彼らの作成した報告書 “デジタル相互依存の時代/The Age of Digital Interdependence”では、主に5つの提言が示されています。5つとも素晴らしい提案ですが、提案5は国連がグローバルなデジタル協力を促進すべきだとしており、OSMにとって特に関連性が高いものとなっています。正確な文章は以下の通りです:
“Digital Public Goodは、特に中低所得国にとって、持続可能な開発目標を達成するためにデジタル技術とデータの可能性を最大限に引き出すために不可欠である”
これはつまり、国連は、国連の合意した開発目標を中低所得国が前進させ、達成できるようにするためのツールとして、自由・オープン・ソフトウェアとデータの利用を推進している、ということです。この利用促進提案が特に重要なのは、自由なデータは自由なソフトウェアと相性がよく、この2つのツールは最貧国政府でさえも広く利用することができるためです。さらに、自由なデータやアプリを利用することで、政府は裕福な国の企業にライセンス料を支払うために乏しい資源を流用することなく、開発を進めることが可能となります。
そして国連は、提案5の実施機関としてDigital Publilc Good Allianceを設立し、開発のためのDigital Publilc Goodの開発と利用を促進することを使命としました。
DPGAは、承認されたオープン・システム、オープン・アプリケーション、オープン・データの登録簿を作成し、グローバルな開発の進展のために誰もがアクセスできるようにしました。
なぜOSMにとってこれが重要なのか?
OSMは世界的な開発において大きな力を持っていますが、認識されていない分野もあります。OSMデータは、多くの人道的活動を支え、様々な専門分野の学術研究をサポートし、多くのソフトウェア開発、特に地理とナビゲーションのアプリケーションの構成要素となっています。OSMデータはまた、国連機関、国際NGO、世界中のあらゆるレベルの政府によってすでに広く利用されています。
DPGAに正式に登録されたことで、OSM運動はさらに正当性を増し、国連の持続可能な開発目標の推進と結びついた国際的な知名度を獲得しました。もっと簡単に言えば、これは私たちのほとんどがずっと前から知っていたように、OSMはすべての人にとって世界をより良い場所にするための素晴らしいツールだと、国連も考えているのです。
今回認証が完了したことで、OSMとそのパートナーの正当性と知名度を高め、新たな機会を生み出します。重要な分野のひとつは、政府の労働環境にあります。Public GoodとしてのOSMが認証されたことは、国、地域、地方レベルの政府機関に門戸を開き、OSMの利用を促進するために利用可能である、ということです。OSMは政府が保有するデータにアクセスする機会を得ることができ、また、OSMのマッピングコミュニティを強化するための政府資金や、OSMの提供システムを強化するための様々なリソースを得ることができ、すべての人に利益をもたらすことが可能となります。
(注: OSM財団はまだ政府内でOSMの使用を奨励、促進する戦略を策定していません。これはまだアイデア段階です)
OSMとそのパートナーの知名度と正当性を高めることは、OSMへのフィランソロピー投資の事例を作ることにもつながります。
最後に、ややうがった視点で見れば、OSMはもともとSteve Coastさんによって、政府による地図作成規制への対応として作られたものである、ということが挙げられます。ただ、自由でオープンなマッピングが、多くの政府機関のマッピングの基礎となるのであれば、それは実に喜ばしいことに違いはありません。